*アメリカ、バークレーのシンクタンク、ノーチラス研究所のHP上での議論を訳して紹介します。

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ポリシー・フォーラム・オンライン

2001年1月31日

http://www.nautilus.org/fora/security/0102A_Cheong.html

このエッセーは、「ピースフル・コリアのための市民ネットワーク」(CNPK)のチョン・ウクシク(Cheong Wooksik)氏によるもので、同じくCNPKのユ・サンヒ(You Sanghee)氏によって(英)訳されたものである。これは、アメリカ新大統領ジョージ・W・ブッシュ政権下でのアメリカの北東アジア諸国との将来の関係に関するシリーズの最初(のエッセー)である。

チョン氏は、DPRK(朝鮮民主主義人民共和国)の指導者金正日氏の中国訪問の意味、DPRKと中国へのアメリカの政策、アメリカが提唱している国家ミサイル防衛、そして、中国、DPRK、ROK(韓国)、日本、そしてアメリカの間の関係におけるその他の諸問題を検討する。チョン氏は、ROK大統領金大中氏が、アメリカ−DPRK間の対話における最適な調停者だと結論づける。

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"Inauguration of President Bush and alliance between China and North Korea"

ブッシュ大統領の就任と中国・朝鮮間の同盟

チョン・ウクシク

2001年のまさに最初の月に起こった朝鮮(North Korea)の隠遁者的な指導者金正日氏の中国への突然の訪問は、国際社会の強い関心を呼び起こした。その訪問がブッシュ大統領就任のわずか数日前に行われたという事実は、金氏と、彼の旧来からの同盟者である中国の江沢民主席の2人の指導者が、朝鮮半島(Korean peninsula)と北東アジア地域における動向の全体構造を吟味した可能性がある。表面的には、金氏の中国訪問は、彼による中国スタイルの開放・改革への意図を強く示唆するものだ。実際、朝鮮は目下のところ、外部世界との関係改善を通じて開放し、改革を導入する以外、20年来の経済的後退を再生させる上でほとんど選択の余地はない。さらに、その共産主義体制は、社会主義政治体制と資本主義経済が同時存在し、巨大な経済的成功をもたらしている中国システムに十分な利点を見出している。

しかし、今回の訪問には、そう見られている以上の何かがある。2人の指導者は、なおも中国を「戦略上のライバル」と見なし、朝鮮を「ならず者国家」と見なしているアメリカに対する共同の戦略を生み出すと思われる。現時点で彼らがどのような種類の戦略を追求しようとしているのか、イメージするのはかなり難しい。

朝鮮にとっては、南、アメリカ、それに日本との関係正常化は経済改革と開放のために決定的に重要だ。実際、アメリカは、「ならず者国家」に対する経済制裁の解除と国際市場への進出にとっての法的、制度的な両方のカギを握っている。日本については、経済的再生のために朝鮮がどうしても必要とする金融支援、それが植民地時代の蛮行に対する補償の形であれ、あるいは、経済開発基金の形であれ、そうした金融支援を供給できる唯一の国だ。朝鮮は現在、経済的必要と安全保障上の現実との間の深刻なジレンマに直面している。ブッシュ政権は、ピョンヤンに対する強硬路線姿勢に向けて動いているように見え、そしてまた、日本では軍国主義が増長する兆候がある。これら2国は、将来、より強力な軍事同盟を作り出すように見える。

朝鮮にとって確かなことは、アメリカと日本からの安全保障上の脅威が完全に取り除かれない限り、アメリカと日本との間でこれまで最も論争的な問題となってきた中距離ミサイル開発計画を放棄しないだろうということだ。実際、戦域ミサイル防衛(TMD)および国家ミサイル防衛(NMD)は、アメリカと日本の強い軍事的野心を象徴するものだが、朝鮮に十分脅威を与えるものだ。もっと悪くすれば、ブッシュ政権はピョンヤンに対して適切な補償なしにミサイルの開発と輸出を放棄させようとし、ミサイル計画の放棄にも関わらず、朝鮮を深刻な安全保障上の脅威にさらそうとするように思われる。

アメリカ元国防長官で、クリントン政権下での朝鮮に対する指針の起草者であるウイリアム・ペリー氏が認めたように、朝鮮のミサイルは、戦争を引き起こすというよりむしろ、アメリカと日本を思いとどまらせる手段という面が多い。言い換えれば、朝鮮にとって、完全な安全保障なしにミサイル開発を放棄することは、戦争抑止のあらゆる手段を失うことになるだろう。

しかし、ミサイル開発を後押しすることが朝鮮を現在のジレンマから救うことを意味するわけではない。もし2003年に配備される予定のTMDが朝鮮のミサイルを無効化させれば、アメリカは大量破壊兵器拡散阻止という名目の下にその共産主義体制を攻撃できるだろう。日本の場合は、もしピョンヤンがミサイルと核兵器の開発を再開すれば、朝鮮攻撃でアメリカと手を握るかもしれない。

振り返ってみれば、アメリカと朝鮮との間の関係正常化のかなりの部分が、1994年の枠組み合意調印後に実現するべきだった。しかし、アメリカはその約束の一部を守らなかった。そして、そのことが基本的に、その下で完全な政治的安全保障と引き替えにミサイル開発を止め、アメリカ、日本と関係正常化する「積極的な見通し」について、朝鮮が間違いないと感じるのが困難だと見ている理由だ。

朝鮮だけひとりジレンマにあるのではない。中国は、ブッシュ政権の発足で同様な状況にある。中国にとって、NMDはアメリカに対する核抑止を衰弱させるかもしれない。もし計画されているように2006年までにアメリカが100発の迎撃ミサイルの配備に進めば、中国の15発くらいのすべての核弾頭のどれもが3発か4発の迎撃ミサイルによって弱められるだろう。この点で、中国はTMDの影響をけっして軽視しえない。90年代における日本の軍国主義の増長と、そして、日本の軍事力に比べての中国自身の空軍力、海軍力の弱さとで、TMDの配備は、中国がこれまで維持してきた戦略的な優位を深刻に脅かす。もっと悪くすれば、もし台湾がアメリカの東アジア・ミサイル防衛網に含められ、さらにアメリカの安全保障の傘の下に入ったならば、中国の台湾との統一という夢は永遠に打ち砕かれるかもしれない。

朝鮮と中国との両者が現在直面しているジレンマを考慮すれば、金氏と江主席との会談の主要な目的は、地域におけるアメリカの覇権に対する共同の戦略を探求することだったように思われる。しかしながら、アメリカは潜在的な脅威でもあり、また2つの国にとっての援助の源でもあるのだから、将来、2国がその超大国にどのように反応するのか、予測するのはなお一層難しい。ここでいくぶん確かなことは、2人の指導者は、懸念を共有し合ったに違いないこと、そして、ブッシュ新政権の下で配備確実なNMDとTMDに対する共同の戦略を探求したに違いないということだ。さらには、彼らは、企図されているNMDの原因でもあり標的でもあると言われているピョンヤンの中・長距離ミサイル開発問題を解決するアイデアを交換したかもしれない。

興味深いことは、2人の指導者は、国務長官に指名されたコーリン・パウエル氏の上院での承認ヒアリングの2日後の1月20日に再び会ったことだ。ヒアリングの中で、パウエル氏は自身の東アジア戦略を明らかにし、その中で彼は、既存の朝鮮政策の全面的見直し、アメリカ、韓国(South Korea)、日本の間の同盟関係強化、前方展開軍事力、そして、ミサイル防衛の配備を強調した。ブッシュ政権の東アジア政策は、実際、冷戦時代さながらのストーリーのごとく聞こえる。それならば、金氏と江主席はこうした新たな環境にどのように反応するだろうか?彼らは、部分的に社会主義体制を復活するだろうか?あるいは、彼らは、ブッシュ政権の「冷たい」姿勢を「暖める」ように「平和」戦略を追求するのだろうか?

短期的な見通しは、中国と朝鮮のこのジレンマは、第一に、アメリカと朝鮮がいわゆる「スターウォーズ」計画(NMDおよびTMD配備)とミサイル開発計画とをどのように決着させるかによって解決されるだろう。ジョージ・W・ブッシュ大統領は、レーガン、ブッシュ、クリントンのステップに引き続いて、「スターウォーズ・プロジェクト」への傾倒を繰り返し表明してきた。

新大統領のそうした強い意図は、国際社会がなおもまた別の冷戦に入り込まされ、そして、朝鮮半島における得難い雪解けムードを途絶させてしまいそうだという世界的な懸念をあおっている。朝鮮の体制は、NMDの配備を、核・ミサイル問題を対話を通じて解決するというアメリカ側の意志の欠如と解釈するだろう。アメリカは、ピョンヤンとの交渉よりNMDおよびTMDを通じた抑止力、攻撃力の強化により焦点を合わせそうだ。共和党は、クリントン前大統領の最も著しい成果と見なされてきた1994年のジュネーブ枠組み合意や1999年のベルリン協定が、悪行への代償以外の何ものでもなかったと信じている。この点で、ブッシュ政権は、ミサイル開発計画の放棄と引き替えに朝鮮に補償を与えるのはかなり気が進まないだろう。このことは当然、ピョンヤンの核とミサイルの問題に関するさらに長引く行き詰まりにつながり、半島におけるなお別の戦争の可能性を高めることだろう。

中国にとっては、もしアメリカがNMDおよびTMDを開発しつづけ配備するならば、朝鮮にミサイル開発を思いとどまらせる理由はほとんどなくなるだろう。その時、朝鮮に対する抑止という口実で、アメリカは事実上、中国を標的にしていることは中国にとって明らかだろう。ロシアの場合も中国と何ら異なる立場にあるわけではないだろう。

多くの専門家が、たとえピョンヤンがそのミサイル計画を断念してさえ、アメリカはその「スターウォーズ・プロジェクト」を諦めないだろうと予測する。彼らは、NMDおよびTMD開発の隠された究極の理由は、朝鮮への抑止ではなく中国だと信じている。しかし、もし朝鮮がその中・長距離ミサイルの野心を諦めたならば、アメリカはNMDおよびTMD開発についてさほど説得力のない根拠しか持たないことになるだろう。なぜなら、その超大国は、そのプロジェクトが朝鮮を含むならず者国家を抑止することに向けられていると常に論じてきたのだから。

この場合、アメリカはNMD開発の別の説得力ある根拠を見つけ出さねばならなくなるが、それはさほど容易ではないだろう。「イランやイラクからの脅威」というのは、十分説得力のあるものではない。というのも、それらのミサイル能力はまったく朝鮮に及ばないのだから。しかし、アメリカは直接に中国あるいはロシアに言及することはできない。なぜなら、そのことは過去の欺瞞を認めることになり、それゆえ、莫大な政治的負担を自らに課すことになるからだ。そのような状況で、アメリカのメディアが政権をそっとしておくことはないかもしれない。

この点で、ブッシュ政権は交渉を通じて朝鮮のミサイル問題を解決しないだろうと論じることが十分説得性をおびている。実際、アメリカにとって、朝鮮問題の解決はNMDおよびTMD開発のうまい根拠を失うことを意味するだろう。深く根ざした不信と争っている戦略的利害のために、アメリカ、中国、朝鮮がそれら自身でその問題を解決するのは難しいだろう。現在の環境の中で、ひとつの良案は、韓国の金大中大統領による仲裁だろう。金大中大統領は、あらゆる方面からではなくとも、世界中の多くの指導者からかなりの支持を受けている。彼はおそらく現時点でいちばん敵意を抱かれない人物だろう。さらに、それら2国の争いが実際に朝鮮半島を取り巻くかなり微妙な安全保障環境を決定するような朝鮮とアメリカとの間を仲裁するのに、金大統領は、ノーベル平和賞受賞者として必要な最小限の権威を手にした。

この点について、金大統領が1月6日のインターナショナル・ヘラルド・トリビューンとのインタビューの中で、彼は北に長距離ミサイル生産を止めるよう頼むつもりだと述べたことに注意するのは重要だ。彼は、NMDおよびTMD開発には直接コメントはしたがらなかった。金大統領の所見は重要である。なぜなら、朝鮮半島における得難い安全保障は、NMDおよびTMDが引き起こす政治的不安定によって台無しにされかねない可能性を認知しているように思われるからだ。韓国の大統領はまた、最先端の問題、つまりピョンヤンのミサイル開発の問題を解決する上で、朝鮮とアメリカとの間を進んで仲裁するように思われる。

正確な日付は確定されえないものの、関係諸国の指導者たちが向こう3ヶ月くらいの間に相互に行き交う公式訪問をしあうだろう。つまり、朝鮮の指導者、金正日氏のソウルやロシアの訪問、金大中大統領のワシントン訪問、ロシアのプーチン大統領のソウル訪問、等々。その際の主要議題が朝鮮半島の安全保障やNMDおよびTMD開発であり得るような一連の公式訪問は、金大統領がアメリカと朝鮮との間の仲裁者として行動するのに良好な環境を作り出すだろう。

この点で、朝鮮の金正日国防委員長のソウル訪問は、朝鮮半島の安定を決定づける上でひとつの重要な里程標となりうるだろう。2つの朝鮮の指導者が、新たな安全保障上の脅威に直面して彼らの政策を調整するよう取り決めるかどうか、それはまだわからない。

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