アメリカ、バークレーのシンクタンク、ノーチラス研究所のHP上での議論を紹介します。

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ポリシー・フォーラム・オンライン

2001年3月21日

http://www.nautilus.org/fora/security/0103A_Beck.html

このエッセーは、アメリカ・コリア経済研究所の調査・学術ディレクター、ピーター・M・ベック氏によるもので、当初、韓国の日刊紙、ハンギョレ新聞に3月16日付けで掲載されたものだ。これは、アジアにおけるミサイル防衛に関する論争シリーズの最初のものだ。

ベック氏は、ジョージ・ブッシュ米大統領が、機能しないミサイル計画に何百億ドルも出費しようとしながら、また、社会福祉やインフラ支出の削減につながる大規模減税を要求しようとしていると述べる。ベック氏は、NMDはただアメリカの同盟国を遠ざけ、中国やロシアに防衛のためにより多くの資源を振り向けるよう促し、そして、それらをアメリカの敵になるようしむけるだけだろうと論じる。彼は、NMDはアメリカと朝鮮半島にとって大きな誤りであることを意味し、韓国はブッシュのチームがNMDを捨てるように勧めなければならないと結論する。

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South Korea and NMD

韓国とNMD

Peter M. Beck
ピーター・M・ベック

ブッシュ政権の提案する国家ミサイル防衛(NMD)に韓国が反対であることを示唆するウラジミール・プーチン露大統領との共同声明に金大中大統領が署名して以来、韓国政府は、ソウルはNMDを支持すると、アメリカの相方を安心させるのに躍起になってきた。

しかし、イギリスのトニー・ブレア首相が先月初めてブッシュ大統領と会ったとき、意外なことに、NMDへのブレアの支持と引き替えに欧州緊急展開部隊へのブッシュの支持を取り付けたのと違って、金大統領の忠誠心は、金の3年にわたる北への関与の努力が潜在的に掘り崩されかねないがごとく、ブッシュ・チームが朝鮮に厳しく対応する意図だと知らされることで報復された。もし「このような友好関係なら誰が敵を必要とするのか」というブッシュ流の考え方で最初のプーチンとの会談の責任から逃げ出したなら、金大統領は許されるだろう。この外交政策の逆行は実際、韓国にとって、NMD(そしてその弟分のTMD)が朝鮮半島の平和を促進するのか、あるいは、緊張を高めるのかを大いに熟考させる機会を与えうるものだ。

NMDの愚行:
ブッシュ集団は、NMDが技術的に不可能で法外に出費させるだけでなく、また、アメリカの国家安全保障を強化することもなく国際的な軍備競争を引き起こしかねないという不都合な事実には気づかないようだ。同時に、NMDを追求することは、朝鮮との国交回復をより一層困難にし、朝鮮半島の緊張を高めるだろう。

NMDは機能しない:
ペンタゴンのトップ・シンクタンク前責任者に劣らぬ権威者のジャック・ルイーナ氏(現MIT電気工学教授)は最近、ワシントン・ポスト紙に「ブッシュはNMDの多くの問題に気づいてないようだ。その固有の技術的不備、その高コスト、そして、それはほとんど建造開始の準備すら出来ていないという事実だ」と書いた。提案されている現在のシステムは、軍部によって手はずを整えられた最も制御されたテストでさえ失敗した。アメリカの諜報機関が地面の穴(クムチャンリ)と不正な軍事施設との違いを見分けられなかったことを前提にすれば、彼らは標的がどこなのかを知ることすら明らかでない。たとえ通常のミサイルを遮断できるとしてでさえ、NMDは、艦船やさらに移動運搬車からの通常でないミサイル攻撃からアメリカを守るものではないだろう。1980年代はじめにNMDイニシアチブに付けられたニックネーム、つまり「スターウォーズ」は、今日なお、あてはまる。なぜなら、計画の全体は依然としてサイエンス・フィクションなのだから。

銃かバターか?:
ブッシュ大統領が大規模減税を要求しているとき、機能しないミサイル計画に何百億ドルも出費するのは、必然的に社会福祉やインフラ支出の削減に導くことだろう。この大統領は、より価値ある計画を見出すために、もはや彼の新しい家の近くの公園で食料をもらうために並ぶホームレスの人々や、彼の家の近くは通るが多くのコミュニティには届かない時代遅れの地下鉄に目を向ける必要はないのだ。過去50年、アメリカは国家ミサイル防衛の開発に1,000億ドル以上費やしてきた。議会予算局は、現在のシステムは600億ドルの費用を必要としそうだが、実際に機能するミサイル防衛システムを実行するには、その額は簡単に倍増しうるだろうと見積もっている。NMD計画なるものは、ただ国防業者らを富ませ、「軍産複合体」を活性化し、安泰にすることを承認するだけのものだろう。

外交的悪夢:
ブッシュの外交政策チームは、冷戦思考にとらわれているように見える。チェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官は、あたかも彼らの以前のボス、フォード大統領に今なお仕えているかのように振る舞っている。アメリカは軍事的に挑戦されない唯一の超大国だ。アメリカが21世紀に直面している軍事的脅威の性質は変化した。通常の脅威に対する防衛ではなくて、アメリカは通常でないテロリストの攻撃に備えなければならない。NMDは前者で失敗し、後者を無視するものだろう。NMDは、ただアメリカの同盟国を遠ざけ、中国やロシアに国防により多くの資源を振り向けるよう促し、それらの国がアメリカの敵になるようにしむけるだけだろう。

ミサイル防衛と朝鮮半島:
もしNMDがアメリカにとって悪いものならば、NMDやTMDは朝鮮半島にとってさらに悪いものだろう。たとえ韓国はそのようなシステムを建造したり、システムの一部を担ったりするよう求められなくとも、アジアにおける結果的な軍備拡大競争の進行により、政府はさらに貴重な資源を国防に費やすように強いられることになるだろう。NMDもTMDも、今日、韓国が直面する主要な脅威である朝鮮の短距離ミサイルから韓国を防衛する助けにはならないだろう。さらに、ミサイル防衛システムを建造する主要な理由のひとつとして朝鮮がいつも引き合いに出されることを前提にすれば、半島における緊張は必然的に高まるだろう。

ブッシュ−金会談の前夜、クリントン政権の朝鮮問題交渉担当者だったウェンディ・シャーマン氏は、ワシントンのコリア・ウォッチャーの集まりで朝鮮に関与することと、NMDを追求することは相互に両立すると述べた。しかし、朝鮮は自身に直接向けられた何十億ドルものミサイルシステムをただ無視するだけだろうと主張するのは、せいぜい単純か、最悪の場合、腹黒いということだ。NMDの追求は、朝鮮との交渉をより難しくさせ、半島の緊張を高めるだけでなく、同時に他方で、韓国の人々へのわずかばかりの安全保障の付加さえ与えそこねるものだろう。

事大主義の時代は過ぎ去って久しい。韓国とアメリカはますます対等なパートナーになっており、朝鮮戦争で流された血で鍛えられた友情を抱いている。真の友人は、友人が誤りを犯そうとしているとき率直に言う責任がある。NMDはアメリカと朝鮮半島にとって大いなる誤りを意味する。韓朝鮮人(Koreans)は、そのような重大なときに自らの声を失わないほうがよいだろう。韓国は、ブッシュ・チームが正気に戻って、NMDを捨てるよう勧めなければならない。このことがより早く起これば、(世界については言うまでもなく)朝鮮半島はただ、よりうまく行くことだろう。

(表明された見解は、必ずしもコリア経済研究所の見解を示すものではない。)