朝鮮民主主義人民共和国 情勢広報 2005年4月

WFP パイプラインの枯渇

WFPの活動は資金不足の為引き続き停滞しており、5月からは120万人の妊産婦 および幼稚園児・保育園児への食用油および豆類の配給が中断された。状況は 依然厳しく、資金調達に力を入れてはいるものの、2004年10月以降大規模の寄 付の申し出が無い。このまま大きな進展が無い限り、6月中旬には高齢者や労 働のための食糧事業の参加者及びその家族、小学生や都市部の最貧困層、計 360万人への穀物配給を止めざるを得なくなる。

WFPが食糧配給を延期・削減すれば、受益者の健康に深刻な影響が及ぶことに なる。地方ではその不足分を補うのが非常に困難である。例えば子ども施設で は給食の量を減らさねばならない。子どもの穀物消費量は60%も落ち、蛋白質 と脂肪の形成に不可欠な豆類や野菜油の消費も急激に減少することになる。中 程度の栄養失調であった子どもも、たちまち深刻な状態になり得る。物価が上 昇し、市場で流通する食糧への依存度がますます高まっている現在、こうした 状況は更に悪化している。同国の弱者層は非常に危険な状態に追い込まれるこ とになる。支援者の皆様には、朝鮮の人々に対する支援を継続し、速やかに追 加寄付を行って頂くようお願いしたい。

公共配給システム(PDS)については特に変化は無く、一日一人当たり250gの米 と玉蜀黍のままである。だが多数の郡担当官がWFPに語ったところによると、7 月には再び200gまで削減せざるを得なくなるとのことである。削減されれば 2001年以来最低の配給量となる。

WFPの新たな観察(モニタリング)制度の一環として、第一回目の世帯食糧確保 状況調査(Household Food Security Assessment)が5月末から6月初頭にかけて 行われた。十日間の間、WFPの観察チームは240世帯の聞き取り調査と集団集中 討議を10回行い、聞き取り調査を行った世帯のある地域を徒歩で観察した。特 に集団集中討議が有益であった。朝鮮政府が神経を尖らせている多くの問題 (非公式経済や家計支出、食糧状況の悪化など)についても議論された。この制 度の意図するところは、上記の三種類の調査を毎年行うことにより、一年間の 農業サイクルの各時期において必要となる食糧を把握し、世帯に対し支援食糧 をより効果的に投入できるようにすることにある。

健康と栄養

WHO 鳥インフルエンザ発生に関する速報

2005年2月から3月にかけて朝鮮の養鶏産業は鳥インフルエンザA型のH7型に 見舞われた。首都ピョンヤンの郊外にある三ケ所の養鶏場が感染した。21 万9 千羽を速やかに処分し、感染した養鶏場における鶏と人体との接触を精密に調 査したため、それ以上の感染は阻止された。H7型亜種の分析についてはFAOが 確認を行った。人体への感染は報告されていないが、朝鮮政府は防疫確保の 為WHOに援助を要請した。これを受けてWHO東南アジア地域事務所のRajesh Bhatia医師とAyana Yeneabat医師が4月16日から23日まで朝鮮を訪問、状況 の把握と政府当局者との事後協議を行った。政府当局者に対し両医師は、疾病 監視制度を強化し、人体の感染を早期に発見し適切な手段をとれるようにする よう助言した。

(中略)

またWHOはFAOと協力し、朝鮮におけるヒトインフルエンザ及び鳥インフルエ ンザの疾病監視・対策制度強化策の立案を支援した。鳥インフルエンザ関連の 活動のため、オーストラリア政府は25万オーストラリアドルの寄付を申し出た。 が、寄付は更に必要である。鳥インフルエンザの再発生に備え、防疫及び調査、 対策の機能を更に強化しなければならない。他のアジア諸国の経験からすると、 同病の再発生は頻繁に起こり得るのである。更にはヒトインフルエンザの流行 に対する全国規模の防疫計画も立案する必要がある。

WHO 郡立病院への支援

朝鮮の大半の住民にとっては、郡立病院が身近な医療施設であり、各里・洞 において最初に相談に赴く施設である。WHOは現在郡レベルの医療施設のイン フラ整備に力を入れており、外科手術や妊婦管理、新生児の看護などの産科医 療に必要な備品や消耗品を各施設に提供している。WHOは医療従事者の知識・ 技能向上にも注力しており、国際的に認知された実践医療に関するWHO技術ガ イドラインの朝鮮語版を配布している。WHOガイドラインの中でも妊娠・出産 合併症や新生児の合併症、衛生検査に関するものは既に朝鮮語に翻訳され、各 郡で広く配布されている。また外科医療のWHOリファレンスの翻訳版を数ヵ月 以内に印刷し、地域の病院に配布する計画を立てている。この本は外科医療の 基礎に関する技術的かつ実践的な情報を網羅している。郡立病院の機能強化支 援活動はECHO及び日本、オーストラリア政府によって資金援助されている。

UNICEF 健康・栄養事業に関する速報

UNICEF 全国子ども健康の日(CHD)

5月20日に「全国子ども健康の日(CHD)」が初めて実施された。6ヵ月から59ヵ 月の子どもの99%にあたる約200万人の子どもがビタミンA栄養補助剤を服用し た。2才から5才までの子ども全員がメベンダゾルの駆除を受けた。全国子ども 健康の日は朝鮮政府とUNICEFが共同して実施したものである。実施にかかる 費用は全て政府が負担し、子ども達の為、6万人以上の医療従事者と保育所職 員が動員された。UNICEFは、公衆衛生省に対しビタミンAカプセルの提供やメ ベンダゾル駆除などの技術支援を行った。これはカナダや韓国、ニュージーラ ンドなどの支援者の寄付によるものである。

朝鮮で必須医薬品を全ての子ども達に届けようとするなら、子ども健康の日 という取り組みは実現可能で、なおかつ費用対効果が高い方法であることが、 今回確認された。また一次医療に関する情報だけでなく、広範囲の医療サービ スを介護者や親に伝えるためにも有効であると思われる。この事業により全国 の子ども達を対象に最大限広範にビタミンAを配給することができた。

UNICEF ORSの生産

(省略)

UNICEF 薬品の配給(日本拠出)

5月、平安北道及び咸鏡道の里立医院・病院448箇所と郡・道立病院39箇所に対 し、中央医事局が医療キットを配給した。6月の配給は平安南道及び江原道、 両江道渡及び黄海南道の里立医院・病院1258箇所と郡・道立病院52箇所を対象 に開始されている。

UNICEF 中央医事局

5月21日から6月14日まで中央医事局との協議を行い、同局の機能強化事業のフォ ローアップを行った。同局及び江原道と咸鏡南道の道医事局において研修を行っ た。CMWの改修(日本拠出)は進行中である。

UNICEF 母体の安全

(省略)

UNFPA 速報

UNFPAでは母体の安全に必須となる医薬品20万ドル相当を郡・道立病院32箇所 及び里立病院23箇所などに配給した。この支援の目的は、医療サービスの各拠 点で十分な産科医療を提供できるようにすることである。

UNICEF顧問の支援を受け、生殖医療用物資の管理システムの見直しが進められ た。UNFPAでは物資を十分に貯蔵できるように医薬品倉庫を修繕し、物資管理 情報システム(Logistics Management Information System, LMIS)を江原道で 開始する予定である。これは昨年UNFPAが行ったLMIS研修に続くものである。 システムには全国標準の在庫管理票が導入される。

南京で行われた行動変容コミュニケーションに関する10日間の研修を支援した。 研修は公衆衛生省や人民大学習堂、医学アカデミーなどを対象に行われた。特 に朝鮮におけるコンドーム利用の促進やUNFPA支援事業に携わる担当者のカ ウンセリング技術の向上に役立った。

人口政策や治療の品質向上、患者への情報提供による治療選択の理念、 HIV/AIDSに関するラオス・中国研修旅行が4月に行われ、全国調整委員会(NCC) から3名が参加した。参加団は、政府がHIV/AIDS予防に関する政策や規定を策 定するべきだと結論づけた。政府当局は医療システムやその他青年同盟や女性 同盟などを通じて広報キャンペーンを行う予定である。

ADRA 速報

(省略)

Triangle 高齢者関連事業の支援に関する速報(寄付者:ECHO、OCHA、SDC、ドイツ大使館)

衛生的な環境と高水準の高齢者介護を目指して行われた、3箇所の「老人の家」 の復旧作業はほぼ完了した。今回行った改良としては、水道・暖房設備の全面 的な点検、居間や相談室その他の復旧などがある。

食糧援助

WFP 事業評価

ピョンヤンの穀物価格が上がっている。3月から4月末にかけて玉蜀黍の価格は 40%上昇し、輸入米は25%上がった。昨年4月と比べ、玉蜀黍の価格は3倍となり、 米は2倍となった。このため平均的な都市労働者の月給では玉蜀黍を5kgか米を3kg も買うことができない。

「偉大なる指導者金日成」の誕生日を記念し、4月15日に食糧の特別配給が実 施された。食糧は国営商店で安値で販売され、例えば肉はキロ190ウォン(1.40 ドル)と、市価の三分の一の価格であった。それでも労働者の月給ほぼ10%分で ある。各郡の経済事情にあわせて日用品が配給された。各家庭は平均0.5-1kg の肉と豆腐1kg、酒1瓶を受け取り、子どもには飴一箱が与えられた。しかし北 部地域では日用品を配給することが全く出来なかった。

穀物不足により、人々が自分達で食べる分を確保できないだけでなく、自宅用、 もしくは市場で売るために鳥や豚などの家畜を育てることが、ますます難しく なってきている。WFPが実施した聞き取り調査によると、豚を飼育している都 市世帯の数は昨年40%減少した。家畜の飼育というのは、重要な収入源であり、 (食糧不足に対する)朝鮮における伝統的な対処方法である。大切な蛋白質を粗 食に追加できるだけでなく、貧しい世帯では肉や卵をより多くの穀物に交換し、 主食を増やすことも頻繁に行われている。

農作業は5月に繁忙期を迎えるが、今年は例年にない規模で役人など労働者が 動員され、田植えや玉蜀黍の除草を手伝った。また同時に、自生植物に対す る需要が高まれば高まるほど、またその採取が難しくなるにつれ、より遠くま で採取に出かけなければならなくなっている。政府は、人々がこうした作業の 為に交通機関を利用できないようにしたが、一方で人々が自分達の時間をこの ような個人的な作業に割くべきか、共同農場での農作業に割くべきか、そのバ ランスの問題については放置されたままである。

WFPの食糧援助の為の新しい観察制度が始まり、各地の水害復興委員会(FDRC) の職員を対象に研修会が行われた。WFPが訪問可能な地域158郡全てから参加者 があり、350名超が熱心に参加した。朝鮮におけるWFPの事業でも初めての 「地域レベル」の研修となった。新しい制度は、強化された支援物資の追跡調 査と世帯の食糧確保状況の定期調査を通じ、より質の高い情報(訪問回数は20% 減少するにもかかわらず)を集めることに重点を置いている。5月の訪問回数は 539回と、2004年6月以来最高を記録した。このうち大半は世帯食糧確保状況調 査にあてられた。同調査では計265世帯を訪問した。一方で公共配給所(PDC)の 訪問はたった7回にまで減少しており、来月以降は優先的に行われる予定であ る。

WFP 労働のための食糧(FFW)

この間FDRCから提案されたFFW事業は合計234件だった。このうち52件が、現地 調査の結果却下、もしくはFDRC全国委員会により撤回された。食糧17,705トン 相当の132件が事業評価委員会(PRC)により承認された。西海岸地域での食糧事 情が改善するまで、22件がPRC提出を控えている。

最近完了したFFW事業により、玉蜀黍畑や水田の灌漑が行われている。例えば ヨングヮン郡(咸鏡南道)では、18.5kmの灌漑用水路が復旧され、現在では300 ヘクタールの水田に潅漑している。労働者2,300名(うち45%が女性)とその家 族がこの事業により援助を受け、毎年のPDS配給食糧の90%に相当する80kgの WFPの玉蜀黍を受け取った。WFP支援によりセフォ郡(江原道)で実施された護岸 工事も完了し、梅雨(7月〜8月)の間、大変効果的に耕作地の洪水被害を防ぐも のと期待される。

WFP 地域食糧生産(LFP)

東海岸の食糧生産工場に、カリタスの寄付による1020トンの小麦粉が渡され、 キューバからの砂糖2000トンはビスケットや混合食工場に提供された。これだ けの量の砂糖があれば2005年末まで生産を続けることが出来るが、小麦粉や小 麦、粉ミルクがまだ不足しており、新たな寄付が至急必要である。既にWFPは 今年1月に粉ミルク不足に対処するため、玉蜀黍大豆ミルク(CSM)生産を止め、 CSB生産へ移行を余儀なくされているのである。更に粉ミルク提供の見込が無 かったため、5月からCMB生産ではDSMの代わりに小麦粉を使用するよう決定さ れていた。この対策により、幼稚園や小学校、全寮制学校向けのビスケット生 産を更に4ヶ月間続けられるようになった。

水道と衛生

UNICEF 水道・衛生事業 速報

水道設備を新たに設置する活動(ECHO拠出)が黄海北道ヨンサン郡・リンサン郡 と黄海南道ウンリュル郡で進行中である。(中略)手押しポンプ設置に備え掘削 作業が現在行われている。

水道設備を新たに設置する活動(ECHO拠出)がヒサン市とホリョン市で進行中で ある。(中略)また北側国境を通って2004年12月に両市に届けられた次亜塩素酸 カルシウム500トンが両市及び近隣地域で配布された。

ウォンサン市のトンミョンサンにおける水道事業がOPECや日本、オーストラリ アなど複数の拠出を受けた。(中略)

オーストラリア政府の拠出を受け、ピョンヤンやハムフン、ナンポなど大都市 の水道管理施設用に200トンの次亜塩素酸カルシウムとモーターの修理部品が 発注された。

Triangle ムンチョン水道衛生事業(ECHO拠出)

今年の本事業の目標は水道施設の揚水・貯水機能を向上させてムンチョンの住 民4万2千人に水を供給できるようにすることである。1000立方メートルの貯水 槽の追加設置が進められている。

2005年4月には水道設備の専門家が太陽熱揚水及び代替衛生システムの二つの 先行事業を事前評価した。

農業

FAO 二毛作支援事業(スウェーデン/SIDA拠出)

17箇所の共同農場にトラクター及び脱穀機を提供することを含め、この事業の 大半は完了した。各地の技術者を対象に統合防除(IPM)の国内研修を2005年6 月中旬に行う予定である。

FAO 家庭菜園支援事業(フィンランド支援)

本事業の大半は完了した(ビニールシートや園芸用具、種芋の冬期貯蔵庫設置 用資材の提供など)が、まだ4箇所の共同農場での建設作業がスウェーデンの NGOであるPMU Interlifeと共同で進められている。

FAO 二毛作・家庭菜園支援事業(ノルウェー支援)

(省略)

FAO 二毛作計画への支援(スウェーデン/SIDA拠出)

スウェーデン政府が本事業の提案に応え、800万SEKをFAO緊急対策復興部に寄 付した。本事業の主要目標は、改良型土壌施肥管理(SFM)を通して春期(小麦・ 大麦・馬鈴薯)や夏期(米・大豆・玉蜀黍)の収穫量を増やすこと、穀倉地帯の 共同農場に、専門知識と研修、更に農業機械を提供して収穫後の作物の損失を 減らすことである。事業計画書はFAO技術部門と協議の上間も無く完成され、 事業が開始される見込である。

FAO 2005年度沿岸漁業協力事業への支援

食糧確保の為の緊急農業支援事業の為、300万NOKを寄付するとノルウェー政府 が明らかにした。この資金は「2006年度沿岸漁業協力事業への支援」企画書に て予定されていたように、漁業事業へあてられる。本事業の主要目的は、専門 知識と研修、更に冷凍設備の提供を通して海洋漁業と淡水漁業の双方を支援す ることである。事業計画書はFAO技術部門とともに、2005年7月執行を目指して 準備中である。

FAO 春期及び初夏の作物成育状況

春期の雨量は例年より少なく、4月上旬まで霜が降りた。しかし5月には穀倉地 帯(平安道・黄海道)全体で雨量が回復した。水分ストレスによる作物への被害 は報告されていない。しかし冬が長引いたため、小麦や大麦の他、ある程度だ がじゃが芋も成育が遅れた。

FAO 食糧収穫状況

小麦や大麦の成熟が遅れていることが気がかりである。通常これらの作物は6 月20日頃には収穫されていたが、今年は7月になっても熟しそうにない。芳し くない報告も受けてはいるものの、二毛作が実践されている穀倉地帯では早期 収穫のじゃが芋の収穫量は1ヘクタール当たり20トンを越えた(地域によっては 約28トン)。水稲の田植えはほぼ完了し、7月には全て終わる見込である。玉蜀 黍と大豆はまだ熟していないものの、順調に成長している。今季とくに目立っ たことは、実験段階にある陸稲の収穫量が多くの共同農場で大幅に上がったこ とである。

豊作の年には、春季収穫(小麦および大麦、早期収穫のじゃが芋)は全国の収穫 高の10〜15%を占める。高地地方のじゃが芋が順調であれば更にこの数字は上 がることになる。2005年度の予想をするにはまだ時機尚早である。

(以下省略)